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「負け商標」が多すぎる!(後編)

「負け商標」が多すぎる!

「負け商標」が多すぎる!(前編)はこちら

負け商標と勝ち商標の比率は?

ところで、この円グラフを見てくれ。こいつをどう思う?

  1. 負け商標64%
  2. 勝ち商標5%
弁理士・小久保真司
弁理士
小久保

すごく……(以下略)

 上の円グラフは、商標公報に掲載された200件の新しい登録商標(2024/10/8 発行)について、ネーミングやデザインの観点からひとつひとつを「負け商標」と「勝ち商標」に分類した集計結果。

 振り分けの基準は「普通に読めるか否か」「覚えやすいか」「語感が良いか」「対象の内容が伝わりやすいか」といったところである。


 また、負け商標ではないけど、明確に勝ち商標とまでいえないモノについては、「どちらでもない」である。まだまだネーミングに工夫の余地はあると思うけど、差し当たって事業や企画に悪影響を与えるネーミングではないという判断なので、ことさらに言及する気も悪くいう気もない。

 ちなみにいうと、今回の調査サンプルには存在しなかったが、本名を使った商標も、基本的には「どちらでもない」に該当する

 なお、本名をそのまま商号や商標にすることについて、自分は少し否定的な見解を持っている。が、それは今回扱うべき話題ではないので、そのうち別の記事で理由も含めて言及したい。

勝ち商標とは?

 少し遅くなったけど、「勝ち商標」にも言及しておきたい。

 ネーミングやデザインに致命的な欠陥がなく、負け商標ではないと判定した商標については、さらに指定商品や指定役務との関係も深堀りした。「読めるか否か」のような前提条件をクリアしたあと、最終的なネーミングの良し悪しは「対象に合っているかどうか」で決まるためだ。

 そのうえで、

  • 顧客のニーズやインサイト(≒本心、本当の望み)を掴めている
  • 名前を見たり聞いたりしただけで、内容・雰囲気・目的の少なくともいずれかが伝わる
  • 視覚的に、聴覚的に「心地よい」
  • 一発で覚えてしまう

 ……上のような要素を考慮し、上記項目の複数を満たす商標を「勝ち商標」と勝手に認定させていただいた。

今回 出会った勝ち商標はコレ!

 今回、商標公報をガン見したなかで、これは間違いなく「勝ち商標」だと思ったのが以下。

「琉球和漢茶」
登録6851926
(商願2023-127947)
※ロゴ商標
ロゴデザインの秀逸さ、和の文化と大陸の文化が混ざり合う「琉球」のイメージを上手く利用して需要者の興味をそそっているところから。
「ねこいちゃ」
登録6851936
(商願2023-103758)
ターゲット顧客である猫の飼い主の気持ち(猫と安心していちゃいちゃしたい)を鷲掴みにした最高レベルのネーミング。
「作歌香」
登録6851958
(商願2024-009540)
お線香のブランド名。言葉から思い浮かぶイメージが良い。
「推守」
登録6851963
(商願2024-024561)
女性向け推しグッズ(写真等の保護ケース)ほか。「おしゅ」と読むことだけ分かれば需要者の記憶に残るし、語感の可愛らしさもある。
「pargo」
登録6851985
(商願2023-110039)
※ロゴ商標
おそらく、友達を表す「pal」と運搬用カートの「cargo」をかけあわせた造語。指定商品は工場内の資材運搬用カートだが、このネーミングセンスならBtoB販売だけにとどまらないと思う。
弁理士・小久保真司
弁理士
小久保

どれもセンスに溢れているけれど、特にお客様の気持ちを鷲掴みにしているのは「ねこいちゃ」かな……。

 逆にいえば、このぐらいのレベルでなければ、わざわざ費用をかけ、商標登録してまで保護する価値はないと、自分的には考えている。


 ということで、勝ち商標として5つ挙げたけど(本当はあと5つほどあります)、商標公報に載っている商標を順番に200件見て、明確にネーミングが優れているといえるのはこの程度。

 つまり、特許庁の審査を経て商標登録に至った商標であっても、ネーミングやデザインが「優れている」とまでいえるのは、そのうちのたった数%程度に過ぎないのである。


 弁理士がコレ言っちゃうのもどうかと思うけど……みんな本当に、もう少しネーミングとか、ロゴならデザインとか、落ち着いてよく考えてから商標登録した方がいいと思います。