- 商標
「負け商標」が多すぎる!(前編)
弁理士として商標登録出願を扱っていく上で気になっていたことがいくつかあったので、商標公報をこのところガン見していました。
その目的のひとつは、上のツイート(↑)で触れたとおり。
最近では弁理士を介さない自己出願が増加傾向にあることは知っていたものの、果たしてその比率が実際どれぐらいなのかは分からなかったので、実際に確認してみたかったのです。
特に誰もカウントまでしてはいなかったみたいなので……
ちなみに、その結果はというと……国内出願であっても、登録に至った商標のうち約7割は自己出願によるもの。つまり、弁理士を介さずご自身で出願された商標でした。
世はまさに、自己出願時代!! ドン!!!! ですね。
その上で……実はもうひとつ、自分的にはより重要なテーマをもって商標公報を眺めていました。
↓ ↓ ↓
「審査を経て正式に登録査定が出た商標のうち、商標としての機能をキチンと果たせるレベルにあるものの割合はどのぐらいか?」
これです。
独立して新しく弁理士の世界でやっていくにあたり、自己出願で商標登録出願をする人たちや他の事務所さんは、ネーミングや商標自体のブラッシュアップにどれだけちゃんと気を遣っているのか……そこを知りたかったのですね。
そのために、まずはこういった視点で……
- 「この登録商標はお客様に覚えてもらえるか?」
- 「市場でお客様から好印象をもって迎えられるか?」
- 「この商標を付した商品やサービスは売れそうか?」
商標公報に掲載された商標ひとつひとつにつき、「勝ち商標」か「負け商標」かを独自に判定していたワケです。
おいそこ!「なんかヒマなことやってんな……」とか呆れるんじゃあないッ!
「負け商標」とは何か?
タイトルにも入れた「負け商標」とは、「そのネーミングやデザインのクオリティが低く、使い続けている限り、事業や企画の足を引っ張り続けるであろう商標」のことです。
もっと簡潔にいうと、「事業や企画の勝利期待値を下げる商標」。パチスロでいえば設定1の台みたいな存在。まあ、この記事を初めて書いた時点では単なる私の造語です。
具体的には、下記の項目に1つでも該当する場合、その商標は「負け商標」であるといえます。
- 覚えにくい
- 読めない(※)
- 商品やサービス等の内容が伝わらない(※)
- 自他識別力がない(検索狙いのSEOキーワードからなる商標など)
- 画としての完成度が低い(ロゴやイラストの商標)
※「一度説明されれば読めて/伝わって、忘れない」ものは除きます。たとえば『鬼滅の刃』の鬼の名前。黒死牟とか玉壺とか猗窩座とか、初見では絶対に読めませんけど、一度でも読み方が分かればもう忘れないですよね。
「負け商標」を使い続けると……?
批判を覚悟で言わせてもらうと、「負け商標」を商標登録する必要なんてありません。
なぜなら、このような負け商標を商品やサービス等に使用し続けたところで……
- (覚えにくいので)知名度も認知度も好感度も上がらない
- (覚えにくいので)登録後の広告・宣伝費用が「勝ち商標」と比べて膨大になる
- (内容が伝わらないので)説明にも余計な手間がかかる
- (識別力が低い場合)文言侵害に警告や権利行使を行っても容易に反撃される
- (イメージが悪い場合)スタッフの士気も上がりにくくなる
こんな、お先真っ暗な展開しか待っていないからです。しかも、名前ですから。広告と違って、使うのをやめない限り負の効果が永久に持続しますからね!
正直なところ、巷にいる他の先輩弁理士先生たちがどうして「商標は早い者勝ちです!」なんて言ってるのかまったく理解できなかったり。
そして……実際に商標掲載公報を確認してみると、この「負け商標」が異様に多すぎるのです……